これまでに姿勢、呼吸、発声、音程、リズムといった基礎を学んできました。これらがある程度身についてきたら、いよいよ実際の曲を使った「実践練習」に進みます。実践は、これまで積み重ねてきた基礎を確認し、歌として形にしていく大切な段階です。

最初に選ぶ曲はとても重要です。いきなり難しい曲や音域の広い曲に挑戦すると、無理な発声になりやすく、基礎が崩れてしまう原因になります。初心者のうちは、童謡やシンプルなポップスなど、音域が比較的狭く、テンポが穏やかな曲を選びましょう。メロディが覚えやすく、リズムが複雑でない曲は、基礎を意識しながら歌うのに最適です。

実践練習で大切なのは、「うまく歌おう」と気負いすぎないことです。まずは、正しい姿勢と呼吸を意識し、喉に負担をかけずに声を出すことを優先しましょう。音程を外さず、一定のリズムで安定して歌えることが、上達への近道です。高音が出にくい部分があっても、無理に張り上げる必要はありません。今の自分が気持ちよく歌えるキーや音域で練習することが、声を育てるうえで非常に重要です。

練習の際には、自分の歌声を録音して聴き返すことをおすすめします。歌っている最中は気づきにくい音程のズレやリズムの乱れ、声の出し方の癖などが、客観的に確認できます。最初は違和感を覚えるかもしれませんが、改善点が見えるようになると、練習の質が大きく向上します。「ここは息が足りていない」「このフレーズは少し急いでいる」といった発見が、次の成長につながります。

実践練習を重ねていくと、基礎で学んだことが少しずつ自然に使えるようになります。意識しなくても正しい姿勢が保てたり、呼吸や発声が安定したりと、歌うこと自体が楽になってくるはずです。その変化が、自信へとつながります。

実践は「完璧を目指す場」ではなく、「基礎を確認し、慣れていく場」です。焦らず、自分のペースで歌うことを楽しみながら続けていきましょう。そうすることで、歌うことへの不安が減り、表現する楽しさをより深く感じられるようになります。

気楽にがんばれ~

(イラスト:マイクを持ってリラックスして歌う人のシルエット)